まんまる石

怖くないんだけど、なんとなく忘れられない体験を一つ。
10年以上まえ。自分が小学校3年か4年くらいのとき。
家族で墓参りに行って、墓の周りに敷き詰めてある丸い小石みたいなのを、じゃりじゃり踏んで遊んでた。

あれって丸くて平べったくて、微妙に縦長な形のやつが多いと思うんだけど。
その中に1個だけ完全に球状のやつがあった。まん丸。
もしかしたら別の墓で、球状の小石を敷いてる所があったのかも知れないけど、
うちの墓は平べったい楕円の石だけ敷いてたから、なんか目についた。
深く考えずに、それをポケットに入れて持ち帰った。

帰宅してからそのことを完全に忘れてて、普通に何日か過ごした。
ある日友達と、近所の稲荷神社で遊んでた。敷地内に公園がくっついてるんで。
アスレチックの上に登ってたら、公園の端っこの方に和服のばあさんが見えた。

表情は覚えてない。見えなかったのかも知れない。距離は15メートルくらいかな。
元々あずき色だったのが、すごく褪せてグレーになったような色の着物。
前の方で両手を揃えてこっち見てた。お辞儀するときみたいな感じで。

そのばあさんの手がすごく白くて、その時なんかその冷たさを想像したんだよ。
自分とばあさんが手をつなぐ想像をしたのかも。

そしたら無意識にポケットに手を突っ込んでた。手に何か当たって、あの墓の小石を思い出した。
たまたまその日同じ服を着てたんだな。

でも手に触れた石の感触がなんか変で、ポケットから出して見た。
そしたらまん丸だった石が、べっこりえぐれてた。
硬い箱の角にぶつかったみたいな。うまく言えない。
欠けたんじゃなくて凹んでる感じで。

そもそも自分で拾ったんだし何とも思ってなかったんだけど、急にいやな気がしてその場で石を捨てた。
なんとなくばあさんの方も見ないようにして、すぐ公園から帰った。

その服は墓参りの後に洗濯されたのかも知れないけど、洗濯機で石が変形する事あるかな?
よく分からない。

そのばあさんも、普通の生きてるどっかのばあさんだったのかも知れない。
ばあさん自体は怖い感じはしなかった。自分はその後何事もなく元気にしてる。

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