これはオレが浪人してた年の夏
家族は二泊三日の旅行に行ってて、
浪人生ってことで
オレだけ一人で留守番してた時の話
オレんちはマンションの6階なんだけど、
昼飯買いにコンビニ行こうと思って
エレベーターに乗り込んで
1階のボタンを押した
で、
エレベーターが4階にさしかかろうって時に
急に寒気がした
顔を上げると、
まさに幽霊のテンプレって感じの
白いワンピースを着た髪の長い血だらけの女が
4階のエレベーターホールからこっちを覗いてる
うわ、なんだあれ!
って思うか思わないかのうちに4階を通り過ぎ、
次の階が見えてきて愕然とした
そこにはさっきの女が立っていて、
やはりこちらを覗いていた
階段で走って下りてきたのか?
って考えたけど
いくらなんでも速すぎる
そして次の階、
そのまた次の階にも女は立ってて
もうこわくて仕方ない
それから何度も何度も女を見たんだけど
いつまでたっても1階に到着しない
オレは慌てて
今エレベーターが何階にいるのかを確かめた
そこに表示されてる数字は4
そしてその数字はいつまでも変わらない
4階を繰り返し通過し続けているってことになる
そう理解した時には
吐き気すら覚えるほど戦慄した
通り過ぎるたびにヤツが見えて
もうこわくてこわくて
で、何回か4階を通過した時、
ヤツはエレベーターのドアを叩きだした
ドンドンドン!
もうこえーって!
いい加減にしてくれ!
って思った
で、よく聞くと
ドアを叩きながら何か言ってる
「開けて開けて」
なんとか聞き取れた
しかしそれは無理なお願いってやつだ
あんなやつをエレベーターに入れたら
何されるかわからない
しかし、このままだと
一生エレベーターに閉じ込められたままだ
4階のボタンを押せば
エレベーターは4階に停止して
外に出ることができるんだろうけど
ヤツが何するかわからない限り
ボタンを押す勇気はない
オレは悩んだ
そうしてると、
女に加えて
エレベーターホールに男が現れた
マスク、サングラス、ニット帽をしていて
顔は見えないが、
右手にナイフを持って
女の背後に立ってた
いかにもヤバそうなヤツが二人
ああ、オレ死ぬんだって思った
女はいっそう激しくドアを叩きはじめた
ドンドンドン!
「開けて!助けて!お願い!」
あまりの恐怖に一歩も動けなかった
そうしてると、
男はナイフをゆっくり振り上げた
そして、
女の背中に勢いよく振り下ろした
オレ「え」
ズサッ
「ギャアアアア!」
次の瞬間、
エレベーターが通り過ぎる階には
だれもいなかった
急いで何階にいるのかを確認したら
表示されてる数字は3だった
ホッとした
やっと抜けられたんだって
エレベーターが1階に着く
幻覚でも見たんだと自分に言い聞かせて、
一歩踏み出した
だけど、
その時聞いてしまったんだ
「どうして見殺しにしたの?」
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