竹田が喫茶店でバイトを始めたと聞き、俺たち四人は冷やかしに行った。
「よお」
店に入り声をかけると、竹田がカウンターからポカンとした顔を向けた。棚の上のテレビを見ていたようだ。
いわゆる“純喫茶”の部類に入るのだろうか。あまりパッとしない店だ。他に客はいない。
「……なんだ、おまえらか」
竹田はリモコンで素早くテレビを切り、相変わらずの無愛想な口調で言った。
「なんだはないだろ、せっかく励ましに来てやったのに」
「それより竹田、真面目にやってんのか。今サボッてなかった?」
「うるせえな」
仏頂面をしながらも、竹田はどこか上の空だった。
ただ、俺たちの来訪に特に驚いた様子もないようだ。
「じゃあ俺、レスカで」
「レモンスカッシュね。今時しないぞ、その略し方」
「俺、冷コな」
「レイコ?」
「アイスコーヒーに決まってんだろ。知らないのかよ」
「俺、クソひとつ」
「馬鹿かおまえは」
「違うよ、クリームソーダの略だってば」
「ええと、俺はカフェ・ド・ロワイヤルね」
「……やってねえよ」
「わりい、トイレどこ?」
しばらくそんな下らない話をしたあと、俺たち四人は立ち上がった。
「そろそろ行くわ。いくら?」
「迷惑料込みで百万円、と言いたいところだけど、今日は特別に俺のおごりにしといてやるよ」
「おっ、珍しく気が利くじゃん竹田。サンキュー。邪魔したな」
「二度と来るなよ」
「アハハハ、キツいわ。それじゃあな。頑張れよ」
「おう、おまえらも……」
店を出た後、俺たち四人は街を見渡した。
街は今日も静かだ。さて、何をしようか。
コメント
他の作品での「竹田」つながりというなら、無意味なエントリー。
もうちょっとダイイング・メッセージを刷り込ませておくべきな作品では?
例えば、注文品の頭文字を順に並べるとなど。
難易度が高すぎ。
「今日も静か」ということは深夜を暗示させたい?
深夜営業の喫茶店を出て「何をしようか」とは、犯罪?
その意図で、四人での注文内容は、それぞれが犯罪隠語を指す?
あまりに不自然で簡単そうなのは、
クソひとつ→留守宅への窃盗侵入後に部屋に糞するおまじない。
冷コ→覚醒剤?(コ●への勘違いが起きそうな略なので「御冷」の方が妥当では?)
レスカ→レディース・カットだと一般業界用語だけど?
カフェ・ド・ロワイヤル→バトル・ロワイヤルのつもり?
関西系の読者の方が逆に理解できないと思う。
もしかして、「しばらく」での後という状況が、4人の内の誰かがトイレへと立っている最中という設定?(トイレから帰って来た描写を省略したらダメな理由とは?)
「俺たち四人は立ち上がった」ということで、「トイレの仲間の代わりとなる存在が席を立った」というドッペルゲンガー話のつもりがオチ?
しかし、4人程度の少人数だと、4人であることは目視で把握できる。一人がトイレに立てば三人が残っていることの方に違和感を感じない。トイレに立っても4人のままだと、素早すぎる帰りに違和感を覚える。トイレから帰らずに席にドッペルゲンガーが出れば、ワープしたみたいで驚きになる。
または、最初からペルゲンガーが店内に居て、勘違いでそれを同行させたとすれば、そもそも店内に入って見付けた時点で違和感となる。しかも、トイレの客のことを竹田は忘れている設定?(不愉快な連中がトイレを使うってだけで気が向くだろう。)