あれは、私が関西にある某家電会社に、コンピューターのオペレーターとして、勤務していた時のことでした。
入社して半年ほどたった10月下旬の薄ら寒い夜、私は夜勤のオペレーションルームにいました。
コンピューターは熱を発するため、常に冷やしておく必要があります。
「なんか、寒いなあ。」
私は容赦なく流れて来る冷気に、首をすくめて電光掲示板のを見ました。
エマージェンシーの赤いライトが点灯しないことだけを祈って…。
真夜中の午前2時を過ぎた頃、コンピューターからの冷気とはまた別の、足を掴まれるような悪寒が、私を捕らえ始めました。
足元からはい上って来る身震い。
それに反して、私の額や背中には脂汗が吹き出しています。
私は自分に起きた異変をどうすることもできずに、ただ天井を見つめていました。
私の喉はカラカラになり、私は肩で息をするしかなくなりました。
(どうしたんやろ。オレ、病気になったんやろか?)
その時、
コン…
小さなノックが、入口のドアに聞こえました。
オペレーションルームのドアには大きな磨りガラスが入っています。
そこに髪の毛のボサッとした女性らしき陰がありました。
「こんな時間に女の人?」
私はドアの前へ行って、悪寒に耐えながら営業用の声で言った。
「どちら様でしょうか?どうぞお入り下さい。」
…
返事はありません。
廊下の防犯灯に、その人影はくっきりと揺らめいています。
「どうぞ。」
私は冷たいドアノブを握り、サッとドアを内側にひらきました。
そこに私が見たものは
!
髪の毛がチリチリに焦げ、目だけを残して顔の全てが焼けただれた、鼻と下顎の無い女性の顔だったのです!
「ギャアーーーッ!!!」
私は自分でも信じられない悲鳴を上げて、ドアをバタン!と閉めました。
その後何がどうなったのか、私は覚えていません。
ひとつ分かったのは、あの悪寒が消えていったことだけでした。
「君も見たんか…。」
翌朝、先輩に言われました。
「ここの洗礼や。」
ここには戦時中軍需工場があり、空襲で多くの女工さんが亡くなったそうです。
合掌
今はその会社は辞めていますが、私にとって一生忘れられない思い出となりました。
(実話です。)
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