小学校低学年の夏休み直前。ミノル(仮)の学校では避難訓練が行われていました。
「ジリリリリリリ」
響き渡る非常ベルのなか非難を開始する子供たち。
自分のクラスの教室を出て右に曲がり、隣のクラスを過ぎると階段に出ます。
そして、階段の手前には通路を完全にふさぐ防火扉がありました。
「ジリリリリリリ」
その大きな防火扉は訓練のため閉められており、その扉自体の端にある小さな
扉を通って非難するのだが、ミノルの不思議な体験はそこで起こりました。
避難訓練といえども低学年の子供。ちょっとしたお祭みたいなもので、騒いで
押したり突付いたり。後ろを歩く子供に押され、ミノルはその小さな扉の下枠に
つまづいてころんでしまったのです。
「ジリリリリリリ」
ころんだミノルが恥ずかしげに頭を上げたそのとき——————-。
あれだけうるさかったベルの音は止み、防火扉を越え階段へと向かっていた子供
たちが消えてしまったのです。
廊下にはミノル一人。何の音もしない廊下。
驚いてミノルはあたりを見回し、そして階段の中二階にあたる踊り場に目をやると、
無表情な男の子がじっとミノルを見ているのです。
—–誰?—–
そう思った瞬間。
まるで津波が押し寄せるようにベルの音、足音、騒ぎ声、そして子供たちの姿が再び
廊下に戻ってきたのです。
転んでから、その間ほんの数秒。
「なにコケてんねんミノルぅ!」
何事も無かったかのように転んだことにツッコむ同級生にミノルは何も言えず、ただ
ただ座り込んで動けないままだったそうです。
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