トイレの落書きなんて他愛のないこと、誰も気に止めない。
岡山市田町の公園、そこのトイレに自分の電話番号を書いておくと一夜の恋人が見つかるという。
数年前のこと……………… まだ明るいうちにそのトイレに用を足すために入った。
噂の通り電話番号が無数に書いてある。なぜかそれぞれに横線がひかれ消されている。ご丁寧に筆記用具まで置いてあった。
私はほんの冗談のつもりで、友人の電話番号を書いた。
後日その友人と会う機会があり、そのトイレの一件を話すと「突然知らない女の子から連絡があり、今晩10時に田町の○○公園で待ち合わせをした」とのこと。彼はまんざらでもなく、とても得意げに教えてくれた。
少し冷やかしてみた。
「噂は本当だった。しかし、どんな子がくるのか判らない。ビデオに撮って、あとで見せてくれないか。」とたまたま持っていたビデオカメラを渡した。
勝ち誇ったように、ほくそ笑んでいた(生きている)彼は、私が見た最期の姿である。翌日「○○が亡くなった」と訃報がはいる。彼の母親から。急ぎ通夜に参列した。
泣き崩れる家族の前に、恐怖の形相まま死に絶えた友人が横たわっていた。
私は昨日のエピソードが脳裏を過ぎったが、それを押し殺して母親に状況を聞いた。
「田町の○○公園で、ボロボロになって転がっていた。」とのこと。
(例の待ち合わせの公園だ!)なにか腑に落ちない気持ちだったが「そうですか…。」としか返事が出来なかった。
次の日…。
「あんたのビデオカメラを預かっている。取りに来てくれないか。」と知らない男性からの電話。
詳しく聞くと、その人は清掃中例の公園の茂みでカメラを見つけた。携帯電話の番号と名前があったので、さっそく連絡をしてくれたとのこと。有り難さより、気味の悪さが先にたったが、親切心を有り難く受け止めて、引き取りに行った。
とりに行った先で、その人は険しい表情で「今直ぐそのカメラを寺に預けるか、どこかへ売り払うほうがいい」と押し付けるように渡してくれる。………………………………なにが映されているのか?見ていいのか、見ないほうがいいのか。悩んだ挙げ句見てしまった。
…………暗闇の中、所々灯が点いている。…バカな鼻歌を歌いながら公園の中を進んでいる。…遠くに例のトイレ…一瞬、薄暗い木の下に視線が移ると…ぼんやりと女の姿が見える…友人の「あの子かな?」と言う声…続いて「その前に仕返しを」と言いトイレに入り、壁に私の電話番号を書いている…その後、「よ~し」と言いながら電話を掛け…遠くからの着信音…木の下の女に視線が移る…その瞬間、氷の上を滑るように女がス~と近付いてくる…「わー」と言う恐怖の声…さらに近付いてくる女…次第に女の顔が大写しに…………少しボケたような、でも目だけはこちらを注視している。垂れた前髪の間から、こちらをジッとみている。
そこまで見て、私は恐ろしさのあまりカメラを投げ付け、何度も踏み付けた。
しばらくして、冷静に戻ると映像のなかで自分の電話番号を壁に書いていた友人を思い出し、急いで例のトイレへ向かった。
トイレの壁、先ず友人のものを探す。案の定横線で消されている。次に私のものを…
たくさんの番号のなか、やっと見つけた。……まだ消されていない。どうにかならないかと、石で削ったり上から塗りつぶす努力をするが数字は鮮明に読め努力は無駄に終わった。
私は携帯電話に知らない女の子からの電話が、掛かってくるのが恐ろしい。
あれ以来、使っていたものは電源を切り何重にも包み天井裏に隠している。
新に番号を取得しているが今だに恐怖心は吹っ切れていない。
コメント
これガチならお前最低だよな