ハンマー

私はかつてあるクラブのキャプテンをやっていました。そのクラブでは毎年新入生の肝だ
めしが伝統行事となっており、私がキャプテンになった年もとり行うことになりました。
肝試しの場所に選ばれたのは一年前に殺人事件があったという廃家でした。
新入生は3人。夜中に皆が見守る中、一人ずつ廃屋に入っていってあらかじめ奥に置いて
あるバッジを取ってくる、というものでした。
まず、最初の一人が中に入りました。ところが待てども待てども彼は戻って来ません。
そこで彼を探すことも兼ねて二人目が入っていきました。しかし二人目も戻ってきません。
そして三人目が行くことになりました。彼は三人の中で最も体格が良く、我々も期待しま
した。しかしやはり彼も戻りません。
事故の可能性もあるし、全員で廃屋を探しましが、三人は見つかりませんでした。
と、そのとき私は上からトントン、トントンという音が聞こえるのに気づきました。音は
かすかですが、確かに聞こえてきます。私は恐怖を抑え、音がする方向に近づきました。
音は屋根から聞こえてきます。私は窓を開け、そこから屋根に登りました。
そこには三番目の新入生がいました。彼は絶望した表情を浮かべ、わけのわからな
いことを小声で呟きながら、屋根を薄汚れたハンマーでトントン、トントンと叩いていま
した。私が彼に声をかけても、彼は何の反応も示しません。私は他の部員を呼び、彼を屋
根から引きずりおろし、病院に運びました。しかし間もなく彼は息を引き取ってしまいま
した。その後どう探しても二名の新入生は見つかりませんでした。問題を起こしたクラブ
は廃部になってしまいました。

それから毎年肝だめしの日になると、そのとき部員だった者の誰か一人が必ず発狂死して
いきました。彼らは皆、わけのわからないことを呟きながら、ハンマーで床をトントン、
トントンと叩きだし、そのまま死を迎えました。
明日がその肝だめしの日で、残っているのは私一人なのです…………

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